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記事 なぜ「囲碁」だったのか。なぜ「10年かかる」と言われていたのか──AlphaGo前日譚

なぜ「囲碁」だったのか。なぜ「10年かかる」と言われていたのか──AlphaGo前日譚

なぜ「囲碁」だったのか。なぜ「10年かかる」と言われていたのか──AlphaGo前日譚
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東京。レミ・クーロンは回転式のデスクチェアに座り、背中を丸めて使い込まれたMacBookと向き合っている。いまだかつて機械がなしえなかったことを達成したいと願いながら。

悲願達成にはあと10年ほどかかるかもしれない。しかしその長い道のりは、ここ日本の電気通信大学から始まっている。会場は華やかな雰囲気とは程遠い──木目を模したパネル張りの壁と、明るすぎる蛍光灯のみすぼらしい会議室。それでも会場は活況を呈している。観客たちは部屋の角に吊るされた古いプロジェクタースクリーンの前に集まり、やつれたカメラクルーが解説者2名による実況ネット中継の準備をしている。

クーロンは昨年の大会と同じタートルネックのセーターを着て、同じ薄い縁なしの眼鏡をかけ、トーナメントの次なる対戦相手シモン・ヴィエノの隣に座っている──シャイで控えめなフランス人のヴィエノは、まるでクーロンをそのまま若くしたかのように見える。

2人は向き合って座っているのではない。彼らの視線は、互いの前に置かれたそれぞれのコンピューターに向けられている。クーロンが手がけるソフトウェアの名は「Crazy Stone」(彼はこのソフトウェアで7年前から参加している)、そして対するはヴィエノと日本人のパートナー池田心のプログラム「Nomitan」。

なぜ「囲碁」だったのか。なぜ「10年かかる」と言われていたのか──AlphaGo前日譚

Crazy StoneとNomitanが対決するのは囲碁だ。両者のパソコン画面には19×19の格子が描かれた碁盤が映っている。縦横の直線の交差部分に、白と黒の碁石が置かれていく。

この対決に勝ち、決勝戦へ進めば、日本の一流棋士への挑戦権が与えられる。大きなハンデなしに、人間の一流棋士に勝った機械はいまだかつて存在しない。たとえ人間対機械の対決に進めたとしても、Crazy Stoneがその歴史を塗り替える見込みはないが、クーロンは自身のプログラムがどこまで進化したか、確認したいと考えていたのだった。

チェスでは勝ったが

その挑戦の道は険しい。1994年、「Chinook」と呼ばれるプログラムで、コンピューターがチェッカーの世界チャンピオンを打ち負かした。その3年後、今度はIBMのスーパーコンピューター「Deep Blue」が、チェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフから勝利を収めた。そしていまや、コンピューターはオセロ、スクラブル、バックギャモンといったゲーム、さらには有名クイズ番組「ジェパディ!」ですら、一流の人間と肩を並べ、ときに凌駕している。

しかし囲碁は違う。囲碁は古くから続くゲームで唯一、まだ人間の脳がコンピューターを上回っている。

2,500年以上前に中国で生まれた囲碁は、皇帝や武将、知識人や天才児たちの余技として愛されてきた。チェスと同様に「二人零和有限確定完全情報ゲーム」(○ゲーム、チェス、チェッカー、オセロ、シャンチー、将棋など)であり、両者のあいだに隠された情報はなく、サイコロのように偶然が介在する余地もない。まっさらな碁盤の上に、両者が交互に黒と白の碁石を置いていき、相手に取り囲まれないよう注意しながら領地を広げていく。

タグ: aiはいつ人間の知性を通過しますか