人の移動を大きく変える「MaaS(マース)」とは? 意味やメリット、国内外の最新トピックを専門家が解説

「移動に革命を起こす」と言われている次世代の移動の概念「MaaS(マース)」。日本でも数年前からビジネスシーンを中心に話題になっているものの、登場して間もない概念のため、いまいちイメージできない方も多いはずです。
そこで、未来の生活のスタンダードとなるであろうMaaSの本質をつかむため、専門家である株式会社MaaS Tech Japanの日高洋祐さんを取材。MaaSとはいったい何なのか、普及によってなにが変わり、私たちの生活にどう影響するのかを教えてもらいました。
目次
教えてくれたMaaSの専門家
株式会社MaaS Tech Japan
MaaS(マース)とは? —交通手段をまとめて、より便利な移動を実現する
鉄道、バス、タクシー、飛行機、フェリーにシェアサイクル……私たちの身の回りには、タイプや運営事業者の異なるいろいろなモビリティサービス(交通手段)があります。「Mobility as a Service」、通称「MaaS(マース)」とは、それらを一つのサービス上に統合し、より便利な移動を実現する仕組みのこと。
引用:『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(日経BP)
MaaSの定義
MaaS構築に向けた共通基盤を作り出す公民連携団体「MaaS Alliance」が2017年に発表したホワイトペーパーでは、MaaSを下記のように定義しています。
“Mobility as a Service (MaaS) constitutes the integration of various forms of transport services into a single mobility service accessible on demand.”
訳:Movility as a Service(MaaS)とは、いろいろな形式の移動サービスをひとつの交通手段として統合させたもの。
「例えば音楽のプラットフォーム『Spotify』では、レコード会社を超えてさまざまな音楽を検索・購入・鑑賞できますよね。その対象が交通手段に変わったもの——つまり、一つのアプリ上で多様な交通手段が検索・予約・利用できる仕組みをイメージしてもらえると、分かりやすいかもしれません」
MaaSはいつ頃生まれた? —始まりはフィンランドから
MaaSという言葉の起源はフィンランド。同国にあるMaaS Global社のサンポ・ヒータネンCEOが提唱しています。以降、モビリティの情報検索から予約や決済までできる「MaaS」のビジネスが生まれ、産業の変革が起こり始めました。
そんなMaaS先進国であるフィンランドでは、首都ヘルシンキにおいて世界初のMaaSプラットフォーム「Whim(ウィム)」というサービスを提供。月額499ユーロのプラン「Whim Unlimited」を使えば、ヘルシンキ内の鉄道やバスといった公共交通機関が利用し放題で、さらにタクシーやレンタカー、シェアサイクルも基本無料(一部時間制限や追加料金あり)。アプリ上で交通手段を横断した経路検索ができるほか、予約も利用もアプリ一つで完結できます。
フィンランドはなぜMaaS先進国になれた?
フィンランドが世界に先駆けてスタートを切れた最大の理由は、国益との関連性の高さにありました。というのも、フィンランドには自家用車メーカーがないため、国民が車を購入するたび国外に国のお金が出ていってしまいます。そこで、MaaS事業を国が支援。自家用車よりも便利に街の交通網を利用できるようにすることで、国民のお金の使い道を、国外の自家用車メーカーから国内の交通事業者へと転換させることを目指したのです。交通事故の多さや、国民の環境意識の高さなどの背景も、フィンランドのMaaSの普及を後押ししたと言えるでしょう。